(女子は学プリ運営委員設定・明け透けセクハラ発言をする子なので注意)





「柳先輩、“かんみどころ”って、どういう漢字でしたっけ」
「ん?あぁ、少し待て」


実行委員長でもある氷帝の跡部さんが主体となって行われることになったこの学園祭。
帰宅部でどうせ時間もあるし、何より愛しの柳先輩が居る。
私は立海の実行委員にまんまと収まり、高い競争率も跳ね除け無事テニス部の担当をもぎ取った。

いよいよ待ちに待った準備期間に入り、さっきのミーティングにて出店する模擬店も無事決定。
テニス部員は本格的にそれぞれの作業に入り、
今の会議室には提出用の書類をまとめている私とホワイトボードを消している柳先輩のふたりだけ。

私が冒頭の、馬鹿みたいな簡単な質問をしても、柳先輩は嫌な顔ひとつしないで笑みを湛えたまま
綺麗にしたばかりのホワイトボードにマジックでさらさらと流れるような手つきで回答の文字を書いていく。
あぁ、ごめんなさい。私のせいで再び汚させてしまって。でもその美しい文字を見れて眼福です。


「“甘味処”は、こう書く」
「あぁ、どころってそっちなんですね。場所の“しょ”とかで使う方の漢字だと思ってました」
「いや?よく目にするのはこちらだが、どちらでも間違ってはいない」
「へえ、そうなんですか」


ホワイトボードに書かれた美しい甘味処の文字を凝視したのち、提出用の書類に急いで書き写す。
柳先輩のと違って私の文字は丸っこくて、綺麗とも汚いとも言い難い字で。
柳先輩にいつかご教授頂こう、と決心してる間に、ふと頭を過ぎってつい口に出してしまったのは際どい話題。


「処っていえば、なんで処女って処って書くんですかね。はじめての初とかの方が合うと思うのに」
「……それは家にいる女性、つまり未婚の女性を指す言葉だな。いるの“い”を、“処”と書く」


一拍置いたものの、淡々と淀みなく答える冷静な先輩をちょっと揺さぶりたくなって。


「ふうん、じゃあ家を出て先輩のお家にお嫁に行けば私は処女じゃなくなりますか」
「それだけでは意味的に無理だな。未通ならば、お前はその称号のままだ」
「じゃあ先輩、粗品ですが受け取って頂けます?」


ニーッといやらしい笑い方で先輩をじっと見上げても、先輩は表情ひとつ崩さない。
その先輩がゆっくり私に近づいてきたかと思うと、次の瞬間には先輩の指におでこを弾かれていた。
そのデコピンは腕が挙がってから間髪入れずに飛んできたものだから、避ける暇も気も無かった。


「セクハラは楽しいか?」
「あれ、バレました?」
「フ。お前は女性なのだから、大概にな」
「はあい。……あ、」


じわじわと心地よい痛みが残るおでこをさすりながら訂正を。
私の想いまで冗談だなんて思われたらたまらない。


「でも先輩、さっき言ったことは本心ですからね?」
「そうか。では折角だ、美味しく頂戴するとしよう」


愛しの柳先輩からのまさかの言葉に、私の方が揺さぶられちゃってちょっと悔しいんだけど。














作成2010.12.23きりん