(※おっしーと関係アリ)





床に点々と脱ぎ散らかした皺々の服たちを、昨日とは逆の順番に次々と着ながら拾っていくのはもう慣れたもの。
半分寝ぼけ眼でブラジャーのホックを留めたときに、一旦履いたショーツの右側の横紐が解けそうなのに気づいた。
ひとつだけ溜息を吐きだしてからそれを強めに結びなおして、改めてブラジャーを着け直すのを再開する。

忍足さんの、いちいち紐を楽しそうな顔をしながら引っ張りたがるあの癖は本当にいい加減にしてほしいと思う。
まぁ分かっていながらそういうモノをついつい選んで身に着けてしまう自分も随分と毒されてるとは思うけれど。

本当は服を着る前にシャワーを浴びてスッキリしたかったけど、そこまでの時間的余裕は無い。
諦めて、朱色のネクタイを締めてジャケットを羽織って、扉に貰った鍵で鍵を閉めてからいつも通り部屋を出た。

目が覚めたときにはもう忍足さんの姿は無かった、朝練に遅刻すると跡部さんが五月蠅いから。
ずっと前のこと、一緒に出るからもう用意せぇ、と忍足さんが朝早くに私を起こそうとしたとき
私の機嫌は死ぬほど悪く、かなりの暴言を吐いてしまった。らしい、というのは全然覚えていないから。

そのときはメモと一緒に鍵が置いてあったからそれを使って鍵を掛けて部屋を出たんだけど。
後日、ベッドで寛いでいたら無表情な忍足さんにわざわざ作ったらしいスペアキーを投げつけられた。
それってちょっと酷くない?醸し出す雰囲気が若干怖かったから何も言わずにおとなしく受けとったけれど。
(殆ど感情が揺れないあの忍足さんがこの態度。私、一体どんなレベルの暴言吐いちゃったんだろう……)

そんな経緯で手に入れた鍵をジャケットのポケットへ押し込むと、貰ったときから付けられていた鈴がちりんと鳴いた。
濃い茶色の革で出来たベルト風の、金具までついたストラップ。に、輝く銀色の鈴。
貰ったときは何も思わなかったけれど。これを見ると時々、あの人は私のことを猫か何かだと思ってるんじゃないかって疑うことがある。
大きな手で頭を撫でたり、長い指で髪を梳いたり顎の辺りを滑らせたり。可愛がってくれるのは嬉しいんだけどね。―――














作成2010.10.16きりん