(跡部先輩×アホの子)





「あー、けご先輩だ」
「……何だその呼び方は」
「だって。けいご って、言いづらいんすもん」
「フン。好きにしろ」


体育館脇の自販でジュース買ってパックにストローぶっ刺してチューチュー吸ってたら。
目の前に現れた、けご先輩。正しくは跡部景吾先輩だけど、けご先輩なの。

けご先輩は私のことなんて気にも留めないで、小銭を自販に投入していく。(小銭持ってたんだ)
赤いランプがいっぱい付いて。けご先輩は真っ黒の缶コーヒーのボタンを押した。(缶コーヒー飲むんだ)
ガラガラと音を立てて落ちてきたそれを取り出して、プルタブをあけて口をつける。(自動販売機の使い方知ってたんだ)


「それ、温かいすか?」
「あぁ」
「是非、先輩のぬくもりで私もその缶と同じくらい温めてください」
「ぶっ、気持ちの悪ィ言い回しすんじゃねぇ!ていうか、やるわけねぇだろ!」
「チッ」
「舌打ちすんじゃねーよ、アーン」


相変わらずつれないわ、けご先輩てば。
でもお顔がとっても私好みだし、冷たくされてもどこか喜んでる自分がいるから。ちーっとも辛くなんてないの。
今みたいにコーヒーを吹いたとしても、普段は絶対やらないようなブレザーの袖で口元を拭う姿も。
それすら絵になってるから凄い。


「じゃあせめて、コーヒーの温もりを分けてください」
「仕方無ぇな。全部飲むなよ」
「いただきまーす」


やった、間接キスゲット。
きききき緊張し過ぎて手が震えて缶に伝染する。
怪訝な表情のけご先輩の目線が痛い中、やっと缶を口元に持っていくと、
今度は缶に歯が当たってカチカチカチカチ五月蝿い。


「……やっぱ返せ、気味悪ィ」
「やです!間接キスするまでは返さないです!」
「返せ!」
「あぁん!」
「あぁん、じゃねー!」


手の中の缶をけご先輩に奪い取られて、だんだんと手のひらがじかじか冷えてきた。
寒いですーって講義しても、けご先輩は何処吹く風。完全無視で缶コーヒーをぐびぐび飲んでいる。
そのぐびぐびにあわせて動く喉の中心のでっぱりくん……

あぁ……喉仏の動きが最高にセクシーです、けご先輩!


「ぐぼっ!げほ、げほっ!」
「あ゛」


けご先輩の喉仏の動きが最高にセクシーだと思ったらいてもたってもいられなくなっていて、
気づけば私の右手の人差し指がけご先輩の喉仏を、ずんっ・と思いっきり押していた。
で、けご先輩は、ムセた。(アタリマエだ)


「てっ、テメェ!何すんだ!殆どコーヒー吐いちまったじゃねーか馬鹿野郎!」
「ごっ、ごめんなさい!あの、喉仏がセクシーだなぁって思ったら……手が勝手に」
「勝手にじゃねーよ!あーもう、マジで意味解んねぇなんなんだお前は……」
「まぁあの、缶コーヒー2本奢るんで許してください」
「2本もいらねぇ!」










なにこれひどい!笑



作成2010.05.09きりん