(名前変換主は男の子です。放浪癖のある写真家くんが、クラスメイトの幸村くんと交流する話。の続き)





あのやり取りの次の日、狙い済ませたかのように天気は快晴だ。
眩しそうな目で空を仰ぎ、絶好の天気を確認したはさっそくテニスコートへと赴いた。

まずはフェンスの外から全体を見渡し、じりじりとコートを照りつける太陽の位置を確認しながら
撮影するのに良さそうなモチーフのあるポジションに何ヶ所かあたりを付けていく。
それから、一枚に収めたときのバランスや彩りの確認。撮影する上で何より彼が大切にしているのが対象が持つ色だ。
例えば、テニスボールの黄色をメインに据えたとき。
コートやラケット等周りに溶け込ませつつ、その黄色が一番生き生きと見える位置や構成を何度もファインダーを覗き吟味していく。
テニスボールに走るラインも重要なポイントだ、ほんの少しカメラを構える位置を変えただけでも印象が大きく違ってきてしまう。
ただし、そこでテニスボール自体を動かす事はしない。その瞬間の自然のまま、いかにその物を魅力的に見せるかが彼流のスタイルである。


「―――なんじゃアレは」
「さぁ……、私には解りかねます」
「んん?あぁ、なーんだ。くんじゃん」
って、なんか賞とりまくってるアイツか?写真の?」


上はカッターシャツでは無く袖が肩口限界まで捲り上げられたTシャツ一枚、とりあえず既定のスラックスを履いてはいるものの、
裾は適当なところで折り曲げ膝までくるくると捲り上げられており、そして白いタオルを巻きつけており工事現場の作業員かと思わず見紛いそうな頭。

そのような、大よそテニスコートには相応しくない出で立ちで自分の世界に入ってしまっているへと
組んでストレッチをしていた仁王と柳生はその動きを止めてまで訝しげな視線を向け、それに反応した丸井もストレッチを止め目線を先へ。
彼の名前を聴いたジャッカルの疑問にそうそうと頷きながら、名前を出した丸井は視線を向けたまま数度ガムを噛みしめてから膨らませた。
―――ちなみに他クラスながら丸井がを知っていたのは、以前が余らせたお土産のお菓子をたまたま廊下に居た丸井へ渡したことから、である。
周囲のテニス部員もレギュラー同様、テニスコートでうずくまるを遠巻きながら不思議そうに眺めた。

切原の調整中であった柳と真田も練習中のいつもと違うコートの不穏を感じ取り、続いて指導を受けていた切原も、何事かと皆の視線の先へ目を向けた。
しばらくテニスコートは静寂に包まれたが、段々とプレイコートのすぐ側に近寄ってくるを認めた真田は弾かれたようにハッとする。


「お、おい、そこの男子!先ほどからウロチョロと練習の邪魔だ!どかんかっ」
「えっ!?ん、なになにどしたの?―――あ、俺!?俺のことか!あっはは、やっべ怒られちゃった、めっちゃ怖っえー!」
「笑いごとでは無い!いつ暴走球が飛んでくるかもしれん、貴様も危険だと言っておるのだっ」
「えー!なに、心配してくれてんの?ひゅーう、やっさしーい!」
「んなっ!」
「おおっ、その表情イイねー!もーらい」
「キエェェェェェェェ!!!」
「おー、それそれ!もっと頂戴!」
「かっ、勝手に撮るなあああああ!!」

「フッ。完全におちょくられているな、弦一郎は」
「そう、っす……ね………ブホッ」


どうやら真田の怒り顔を気に入ったらしいに勝手に写真を何枚も撮られ、とうとう逃げ出してしまった真田をはウキウキと追いかけまわす始末。
好きな写真(モノ)、その撮影に入り込むと、途端にいつも以上のハイになってしまうのテンションに真田がついて行けるはずも無く。
散々に振り回されている真田を柳は冷静に観察し、それを一緒になって眺めていた切原は普段厳しい副部長の初めて見る一面に笑いを禁じ得なかった。
―――それを逃走中の真田にバッチリ見られ、後から八つ当たり混じりの苦い制裁が待っているとは気付かずに。










どうしてもおわらな(ry



作成2011.07.25きりん