(王道☆おさななじみ)





「くーちゃんはドコの中学受けるんだっけ?」
「青学だが。」
「へぇ」


久しぶりに再会した幼馴染、というのか昔馴染とでもいうのだろうか。
俺と彼女の母親同士が昔から仲が良く。彼女の一家は普段は海外に住んでいるのだが、
たまに帰国するとその都度我が家に母娘で(時々は一家揃って)遊びにやってくるのだ。

母親たちが水入らずの会話を楽しんでいる間、
俺が彼女―の相手をするのがお決まりのパターンとなっていた。
同い年ということと、も俺も幼い頃から、互いをきちんと認識する前から出会い一緒に遊んでいたので
いささか成長した今でも男女の隔たりのようなものを特に感じることは無かった。

中学に入る直前、再び帰国しいつものように家にやってきた馴染の母娘。母親たちは早速会話に興じ、
の方は平常通り俺と一緒。真夏の暑い日だったから、外に遊びに出ることはせず俺の部屋で過ごすことに。
部屋に通されたは慣れた風に遠慮無くベッド寝転がり、
青学に進学を決めていたとはいえ、参考を兼ねて俺がいくつか集めていた私立中学のパンフレットを眺めていた。


「私もねー、こっちの中学に入る予定なの。」
「……ほう。一家揃って帰ってくるのか?」
「んーん、私だけ。来年からふたりとももっと忙しくなるみたいで、あんまり家帰ってこなくなりそうだから。」


ひとりで家に居ると、危ないでしょ。と、読んでいたパンフレットを閉じ、
今度は青学のパンフレットを手に取り眺め始める。
確かに海外は物騒だと聞く。年頃の娘がひとりですごすのは、色々不安も多いことだろう。


「そうか。それで、は何処へ入るつもりなんだ?」
「くーちゃんと一緒がいいな、って漠然と思ってたんだけど。青学じゃ、通うにはちょっと遠いわ」
「それだったら、家に住んでここから通うのはどうだ。部屋は余っているぞ」
「ふふ。嬉しい申し出だけど。おばーちゃんが、今まであんまり一緒にいれなかった分一緒にいたいって」
「……そうか」


少々、落胆してしまった。
一緒に青学に通えるかもと一瞬希望を持ってしまったから、余計に。

口には出さないが、俺だってともっと一緒がいいと。
こんなに一緒にいて落ち着く相手はあまりいないから、ともっと沢山の時間を共有したいと。
海外ではなく日本に住んでいればよかったのにと。常々思っていた。
だから日本に帰ってきてこちらの中学に入ると聞いて嬉しかったし、それならば同じところへ通いたいと欲も出てしまった。
まぁ、全ての願いが叶うわけは無いことは解っている。今は、今まで以上にと会うことが出来ることを喜ぶとしよう。


「青学以外で、良いと思うところは無いのか」
「そーね。氷帝が今のところ一番良いかなって感じかな。通うには丁度良い距離だし」
「氷帝か。あそこは設備も整っていると聞くし、良いのではないか」
「ま、受からなきゃ話にならないけれどねー」
ならば問題無いだろう。自信を持て」
「あ、言ったわね。信じるから」
「ああ。」


俺の言葉通り、後日の元へは氷帝学園中等部から合格通知が届いたようだ。
これから色濃い人物達に囲まれた中学生活がお互い始まるのだが。
まぁそれは、また別の話だ。










“みっくん”呼びと迷いました



作成2010.03.29きりん