(※(オサム→←女子)←白石 白石報われてません。 変換率高め)





放課後の教室。
窓際いっちゃん後ろの席に座るん前の席の、誰のかよう知らん椅子をガタガタ引っ張り出して後ろ向きに座る。
ポチポチと、何ぞ携帯弄っとったまま顔も上げんかったクセに
「なんや白石」と淀みなく俺だと言い切ったお前に、ちょっとくらい期待してもバチ当たらんやろ。なぁ?
(まぁどうせ。何で解ったて聞いたところで、俺の吐き潰した内履きに書いてある苗字見えたとかそんな回答しかくれんのやろけど)

オミヤゲや、と。机にイチゴオレとフルーツオレのふたつ並べて置いたら、やっと顔上げよったわコイツ。
気ィ利くやん、と。目ぇ輝かしてピンクと黄色のパッケージを交互に眺めた後、
こっち貰うわとが手ぇ出したんは俺の予想通りのイチゴの方。
嬉しそうにストロー・ブッ刺して、ひとくち喉の奥に流し込んでから。ようやく俺らは目が合うた。


「おいしーわ、おおきに」
「気にすな」


ひとことそう言われた後、すぐに視線を逸らされた。
あぁ、そう言うと響きが悪いわな。只単に、再び携帯を弄るために視線を落としただけなんやけどなは。
せやけど俺は寂しかってん。ようやく目ぇ合うたのに、見詰め合った時間があんまりに短かったから。

ひとつため息吐いて。俺も喉が渇いたし残ったフルーツオレを手に取る。
(この黄色と緑っちゅうパッケージの色合いが、なんやウチのテニス部のユニフォームみたいやな。)
無駄にゴミが散らんように、ストローの外装はパックにくっつけたままストローだけを取り出して。
収納されとったストローを伸ばして繋ぎ目がカッチリ噛みおうた感触を確かめてから、パックにブッ刺す。
ひとくち吸い込むと、口の中に甘ったるい味とフルーツか何なんかよう解らん風味が広がった。


「メールか」
「せや。」
「オサムちゃんか」
「……まぁな」


偶然か必然か。
部活終わりの帰り道。オサムちゃんが運転しとる車の助手席にが座っとんのを見た。
それだけやったら、単に遅くなったからとか体調不良とか。
そんな理由で仕方なく、っていうのが普通想像し得る範囲の話。

せやけど。俺が見たんは中学生の顔したや無い、紛れも無い、“女”の顔をしたやった。
(やで解ったんや、ふたりの事。それにあんな顔のを俺は初めて見て……なんちゅうか、敵んわ。)
俺ん横を車が通り過ぎる一瞬。オサムちゃん越しに目が合うたその瞬間。
俺を認めて驚いたの顔は女の顔が崩れていつもの、俺の知っとる顔に戻った。

それを見てちょっとは安心したけど、それでも俺の頭は直前に見せられたあの顔がチラついて離れん。
お前はあんな顔も出来るんやな、一番近いとこに居るって勝手に自負しとったけど撤回せなアカンな。
同時にな、……ホンマに一番近いとこに行きとなったわ。


「―――それで?お前は、それで寂し無いんか」
「は?何やそれ。どういうこと?」


俺の質問を全く予測して無かった上に意図も掴めてないらしいは、
携帯から顔を上げてホンマ「きょとん」いう効果音がピッタリの顔をしよった。
ちょっと笑ってまいそうやったけど、それは抑えてなるべく冷たく突き放すような口調で俺は喋る。


「ホンマは相手にされて無いんとちがうか。コドモに本気になるとは思えん」
「っはは、ウチかて別に、オサムちゃん自身求めとる訳や無いしそんなんどうでもエェ。何言うてんの、白石」
「……そんなモンかいな」
「そんなモンや」


その言葉が本心かどうかは解らんが(何せ相手は“女”や、どう化けてるか想像付かん)
は楽しそうにケラケラと笑った。
まぁ今はその笑顔と笑い声に免じてここは引いとくけどな。


「そろそろウチ行くな。イチゴオレごちそうさん」
「あぁ、オサムちゃんにちゃんと部活顔出せて言うといて」


閉じた携帯を握り締めて、ヘラヘラ阿呆みたいに笑いながら俺にヒラヒラと手を振るを見送った後、
ひとり取り残された教室で俺は決心するみたいに呟く。


「……今度は逃がさへんからな。捕まえたるし、顔見たる」


声は小さすぎて室内に反響することも無く、空しく消えた。










白石って、個人的にはこういう報われないような話系を当てはめてしまう…



作成2010.02.22きりん