(※真田も柳(この人は余計に酷い)もキャラ崩壊気味でごめんなさい なんか色んな意味で古臭いかも?)





真田弦一郎はある日の放課後、校舎裏に呼び出されていた。


「このわけの解らん手紙を寄越したのは、お前だな?」


―――ことの起こりは朝練を終えた彼が生徒玄関で靴を履き替えようとしたその時。
―――自身の下駄箱内に一通の手紙が収められていることに気が付いた時からだ。


全国区である男子テニス部のレギュラーに加え副部長を務めている真田。
手紙を貰うことは“彼の人となり”上そう多く無いが、それでも先の要素が有ってかゼロでは無い。
今回は初めてのときほどに動揺することは無かったが、矢張り慣れはしないのだろう。
目をパチパチと二・三度またたかせ、周囲をキョロキョロと二・三度見回して、
それから改めてもう一度、下駄箱内の手紙に目線を戻した。

すう、とひとつだけ息を吸いそれを止めてから一瞬の間ののち。
覚悟が決まった!とばかりに目をギラリと光らせ、素早くそして勢いよく手を伸ばし目当てのものを手中にした。
息をゆっくりと吐き出しながら、その獲得物の表面を目にした彼の顔がみるみる強張っていく。


「な、何が書いてあるか全く解らん!これは宇宙語か、宇宙人が我が立海に居るというのか!」


冷静に考えれば何を馬鹿なことを、と後ほど本人もそう思ったそうだが、
このときの彼は、自分の範疇外である未知との遭遇に脳が正常な判断を下すことが出来なかったのだ。

なんということだ、我が立海はもう終わりだ!などと混乱に陥り喚き散らす彼を
朝練メニューを日誌に付けていたために少々遅れて生徒玄関へとやってきた柳がそれを目撃。
その様子を目の当たりにした柳は、いっそ関わらずそのまま教室へ向かってしまおうとも考えたが。
まぁ困っている彼に手を差し伸べるのも友人務めだ、とそれっぽい言い訳を自分自身に言い聞かせ、
彼が手にしているものにただ興味を抱いただけという事実は脳の片隅へ追いやった。


「どうした弦一郎、そんなに大声を出して」
「あぁ蓮二、どうやら我が立海には宇宙人が紛れ込んでいるらしい!これを見てくれ、これがその証拠だ!」


柳の眼前に、まるでどこぞの黄門様御一行が印籠を見せ付けるかのごとく“ずずい”と問題の手紙を押し付け、
「俺にはこの記号の羅列、何かの暗号のように読み取れるのだが。蓮二はどう思う」とハッスルする真田。
それを見せるよう誘導する手間が省けた柳はわくわくしつつ、しかし表にそれを出すこと無く彼の手からその手紙をもぎ取った。
そして柳はその手紙の表書きをまじまじと見つめたのち、了承も得ず勝手に手紙を開封し忙しなく右へ左へ目線をやり読みふけった。
(……と、考えられる。(ここの言及は敢えて避けることにしよう))

確かにその文字列は、お世辞にも綺麗とは呼べる代物では無かった。
とはいえ、一応日本語にはなっている。色々目を瞑り何とか頑張れば読めないことも無い。
ただし。手書きで書かれているにも関わらず、不必要なところで小文字が混じっていたり片仮名であったり。
要するにそれらは所謂ギャル文字というものだった。何度も言うが、手書きなのに。

柳のクラスにはギャル文字を使う人間がおり、彼自身の好奇心から見せて貰う機会があったので順応できたが、
確かに真田のような昔気質なタイプに突然このような類のものをつきつけたところで、
今のようにパニックに陥るか或いは憤慨するのが関の山だったのだろう。


「案ずるな弦一郎、これはただのラブレターだ」
「こ、恋文だと?この宇宙語で書かれた暗号がか?」
「内容は一般的なので省くが、要は放課後に校舎裏に来て欲しいという。まぁお前次第だがな」


一般的なのは間違いないが読み上げるのは面倒なので、詳しい内容を知りたければ自分で解読しろ。
との意味合いを含みつつ、柳はまだ困惑している真田の手中に手紙をねじ込んでその場を去っていった。
残された彼はチャイムの音で我に返り、慌てて教室へと向かった。












作成2010.02.28きりん