(ジャッカルとクラスメイト 短い)





「ねぇジャッカル、昨日のサッカー見た?」
「いや?見てねぇな。ってお前リアルタイムで見たのかよ、夜中の2時とかだろ放送」
「えー、ジャッカルってばブラジル出身でしょー。見なきゃ駄目じゃーん」
「あのなぁ、ブラジルのヤツが全員サッカー好きだと思ったら大間違いだぜ」


違うの?と本当に不思議そうに首をかしげるに対して乾いた笑いしか出ねぇよ。
まぁ別にサッカーは好きだけど、俺は普通のレベルだと思う。
だいたい、ブラジル出身でもサッカーやらずにテニスやってる俺みたいなのもいるだろって言ったら、
あっ、そうだねーとか気の抜けた返事をかえす始末。本当に解ってんのか……
軽く溜息をつく俺を後目には大きなあくびをしやがった。ったく、女子なら手のひとつも当てろっての。


「眠いんだろ」
「うん、眠い。次の時間たぶん寝ちゃうから、後でノート見せてー」
「宣言をするな、宣言を。ホントに仕方ねーな。貸してやるけど、なるべく起きて頑張れ」
「ん」


何かとボケーッとしがちなを前後席のよしみで面倒見てるが、俺は甘いんだろうか。
いや、ブン太や赤也ほどには手が掛からないから負担とかは全然無いんだけど。
なんとなく放っておけないんだよなぁ、コイツって。


「そうだ、前誕生日にブラジルのお守りくれたじゃん?」
「おう、エスカプラーリオか」
「そう、それっ。それカバンにつけてからね、忘れ物とか落し物あんまりしなくなったのーすっごい効き目!ありがとねぇ」
「……そうか、よかったな」
「うんっ」


あれは身を守るもんだから、カバンに付けるとか忘れ物に効果があるとかっていうのとは少し違うんだけど。
まぁこんなに喜んでくれたならやった甲斐もあるってモンか。

そうして雑談をしていると、時機に教科担当が教室へやってきてチャイムが休み時間の終了を告げた。
抑揚の無い喋り方で、子守唄みたいな講義につい出てしまったあくびを噛み殺す。

そういえば、は大丈夫だろうか。
ふと気になってチラリと後ろを覗き見ると、時々船を漕いではいるものの、なんとか黒板を睨んでいて。
別に俺の言葉を守ってるってわけじゃ無いんだろうけど、それでもそうやって頑張っている姿には好感を持てる。

うん。もし耐えられずにが寝ちまっても、ちゃんとノートを貸してやろう。意味が解りづらい部分も教えてやろう。
そう思うと講義を聴く耳も理解する脳もシャンとして気合が入るし、字も5割増しくらい綺麗になるってモンだ。

本当は遅くまでサッカーを見てたせいで殆ど寝てないのも、眠いせいで講義が疎かになるのも全部本人のせいなんだけど。
何かと頑張ってるヤツは助けてやりたいって思うだろ。
テニス部の奴等もそうだから理不尽な目に遭っても大方許しちまうし、こうやってるも同じ。

あーあ。やっぱり甘いんだろうな、俺は。
ま、構わねぇけど。










ジャッカルは良い子



作成2010.12.17きりん