(※ガッツリ暴力有り、イタイ系でダークな感じなのでご注意を。人を選ぶ話で更には理解不能ですがご容赦くださいー)













































「……





前髪引っ掴んで無理矢理顔を上げさすと、彼女はギュッと目ぇ閉じて眉間に皺寄せる。
全く。いつもアトが残るでアカン言うてるのに、ホンマ聞かへん子ォやなぁ。
普段は何が起きても乱れず制御出来る心は、彼女相手やとなんやイラついて抑えられん。

その心のまんまに俺は無意識に手ぇをあげてしまう。
ほらな。いつの間にか耳の奥には乾いた音が、解けかけた包帯から覗く左手のひらには痛みが残っとる。
目線を落とせば相変わらず目ぇ閉じたまんまな彼女が片頬を赤くして、地べたに這いつくばる姿。


          ちゃうねん、そんなつもり無いんやて。ホンマに俺、お前の顔は殴りとうないんや。
          お前の、言うんなら陶器のように滑らかで雪よりも白い、その綺麗な肌に傷はつけとうないんや。
          完成された芸術のようなお前を、自分の手の中に大事に大事に仕舞っときたい。

          せやけど、なんでか知らんけど気づくといっつも殴っとんねん。
          お前のその顔が俺の手で白から赤く腫らされる様を見ると、妙に俺ん心は安らぐんや。
          たまに爪が当たって赤い線が浮かび上がれば、心が昂ぶってしゃーないんや。

          そんな自分に、戒めのためと殴ってしまう左手に包帯きつく巻いててんけど、これが全く効果あらへん。
          気づくと彼女傷つけて。
          金太郎を制御するために毒手なんて言うてるけど、あながち嘘やのうてホンマなんやないか?
          毒手が意識持って勝手に暴れてんちゃうん。……んな訳あらへんのは解っとるけど、そう思いたくもなるわ。





「もう、やめて……っ」





絶望しきって光を宿すことも忘れてしもた彼女の瞳が、俺を映し出す。
瞳に映るんは彼女と違てギラギラと獣のような目ぇしとる俺。

お前のその瞳、好きや。
だからもっと見るんや、もっとや。その瞳で俺をもっと見るんや。


          見んな、そんな瞳で俺を見るんやない。
          頼むからこんな俺を見んといてくれ……!

          見られてんのが耐えられんようなって、俺は右手で彼女の瞼を下ろさした。
          肌に触れた瞬間、震えが感じている恐怖とともに伝わって。
          落ち着かせようと、瞼へやった右手を頬にそっと沿えようと伸ばせば
          また殴られるとでも思ったんか、彼女は身を捩って逃げようとする。


なんや、何してんねん。その反応ありえへん。
イラつくわ。―――















……あぁ、俺また殴ったんやなぁ。
いつもより数倍デカい音と、感覚が麻痺してじわじわ熱うなっとるさっきまでの位置とちゃうとこにある左手と、
威力があったんか唇が切れて赤いものが顎を伝って身体へと流れていく目の前のお前。

彼女の肌と相俟って、その様はとても鮮やかに、魅力的に見えて。
思わず赤に目ぇ奪われて、触れとうなって。
手ぇ伸ばして俺は自分の指で彼女の唇をなぞりそれを絡めとる。

俺の指先を染めとる赤い色、それはまるで彼女の内なる感情の表れのように見えた。
彼女の内側に触れることが出来たような気ィして、俺は興奮から絶頂を覚えて震えが止まらんようなって。
それから、

もっともっともっと、それに触れたい。
お前ん中に触れたい、お前の全てを支配したい。
お前の全てを手に入れとうて。身体も心も全部全部全部俺んものにしとうて。
俺以外を見んといて欲しくて。その瞳を俺以外に見せんで欲しくて。

なんや。
せやったら、そうすればえぇだけや。





「めっちゃ好きやで、


制御が利かんようになった俺は、たぶん最高でいびつな笑顔浮かべての唇にキスひとつ落として、
それから―――










「どうも、しらいしくらのすけドエス!」って感じに能天気でいきたかったのに、どうしてこうなった
いたたまれなくなったら、こっそりひっそり「この話、消えるよ」




作成2010.04.21きりん