(※アニメジュニア選抜アメリカ戦真田と跡部のダブルス『破滅へのタンゴ』ふたりが音楽会へ行ったお話を夢仕立てに 友人(左側)→跡部相手)





「音楽会?」
「うん、チケットあるんだけど行かない?今日の夕方なんだけど」
「あ。ごめん、今日は約束があるのよー」
「そっか。急だもん、気にしないで」


イトコの景吾が急に昨日の夜わざわざ私の家まで来て「余ってるからお前にやる」と、音楽会のチケットを2枚寄越してきた。
無駄にするのも勿体無いし、音楽にちょっと興味もあったし。ありがたく頂いたのはいいけれど。
よくよくチケットを確認すればその日付はなんと今日。あのね……急すぎるわよ。

一縷の望みを掛けて(大げさ?)朝一番でを誘ってみれば見事に空振り。
他にも何人かに声を掛けてみたけれど「用事がある」とか「そういうの自体が苦手だから」と良い返事は貰えず。
ひとりは寂しいし、行くのを諦めようとしたそのとき、がとんでもないことを言い出した。


「そうだ、真田くんと行ってきたら?」
「はぁっ!?何言ってんのっ!」
「いいじゃない、こんなことでも無いと誘えないしー。おーい、真田くーん!」
「ちょっと待っ……あ、」

「む。呼んだか?


丁度、朝練を終えて戻ってきたらしい真田くんが柳生くんと一緒に教室に入ってきたところで。
の声に気づいた真田くんは自分の机へ向かわず、まっすぐこちらの方に歩いてきてくれる。


「呼んだ呼んだ。あのねー、真田くん今日の放課後用事とかある?」
「いや、今日は特別何も無いな」
「じゃあ音楽会行かない?が一緒に行く人がいないからって困ってるの」
「ほう?そういうことならば力になろう。まぁ、が俺でよければの話だが」
「う、うん!全然いいっ。でもその、迷惑じゃない……?」
「構わん。困っているのだろう?遠慮をするな」
「えっと、じゃあ……お願いします」
「あぁ。では放課後にな」


片手を上げて自分の席に戻る真田くんを見送りつつ、私は力が抜けて床にしゃがみ込んでしまった。
くすくすとが笑いながら「よかったじゃん」と軽くそんな私の肩を叩いてきて。
それを恨みがましく見上げてみるも、嬉しいのは事実で。口元の緩みを抑えられそうに無い。
おせっかいに感謝しつつ、口元を手で隠しつつ。チャイムが鳴ったと同時に私も自分の席へ戻った。















「青春台文化会館で4時からか。急がねばな、少し速度を上げるぞ」
「うんっ」


学校から駅までの距離を少し足早に行く。
真田くんはたぶん、速度を上げたと言っても女子である私に合わせてくれてるんだろうけど、
それでも隣に並ぶまでにはなれなくて、息ばかりが上がる。
チラッと振り返った真田くんはそんな私の様子に気が付いて、黙って腕を引いてくれた。
そのお陰でもっと息が上がって頬も真っ赤になってしまったけど、電車には間に合ったからいっか。

走ったお陰で余裕を持って到着出来たので、
会場内に設置されていた自動販売機で飲み物を買ってロビーのソファでふたり並んで一息ついていると
向こうから見覚えのある男女がこちらに歩いてきた。


「よう、来たか。……なんだ、誰かと思えば真田じゃねーか」
「やっほー。ふたりとも、結構早かったね」
「跡部か。む?も一緒か」


見覚えのある男女っていうか……景吾とじゃん……!


「あれ?、約束あったんじゃなかったの」
「うん。約束してたよー、跡部くんと」
「なんだ、行き先一緒なら言ってくれれば良かったのに……あれ、私たちより学校出るの遅かったよね?」
「アーン?んなモン、俺様が車で迎えに行ったに決まってるだろうが」
「なによ景吾、私たちも一緒に乗せてってくれたっていいでしょ」
「バーカ。とふたりきりの時間を邪魔されてたまるか」
「ごめんねー、跡部くんが黙ってろって言うから」
「お、そろそろ始まるな。じゃあ後でメシでも奢ってやるからちゃんと待ってろよ、お前らふたりとも。行くぜ、
「はーい、じゃあふたりともまたね」


景吾の相変わらずの俺様っぷり(というより、自己中っていうのよあれは)にため息をついていると
疎外感を感じたのだろうか、ちょっとだけムスッとしたような顔で黙ったままだった真田くんが口を開いた。


「……
「なぁに?」
「いや、その……跡部とは恋仲なのか」
「恋仲?……あぁ!えっと……まぁ、そうだよ」
「そうか」


また黙った真田くんは何かを考え込んでいるようで。
私は少し、その様子にショックを受けた。
だってと景吾のことを聞いてくるとは、……のことを気にかけるとは思ってなくて。
真田くんはもしかして、のことが好きなのかも。

今から楽しい音楽を聴くというのに、すっかり沈み込んでそれどころな心境じゃ無くなっちゃった。
せっかくさっき、ゼイゼイ言いながら一緒に電車に滑り込んで。
それから会場に着いてからは「早めに着けて良かったな」って真田くんがちょっと笑ってくれたのに……。
色んな想いを頭の中でぐるぐる巡らせていると、また真田くんがポツリポツリと話し出した。


「お前は、……ふたりを見て何とも思わんのか」
「え?」
「下の名前で呼び合うくらいだ。その、は……跡部のことが好きなのでは無いのか」


本当に真剣に、心配そうな顔で真っ直ぐ私を見つめる真田くんにドキドキが止まらなくて。
そのせいで何も考えられなくて、言葉の意味を理解するのに時間が掛かってしまった。


「へ……………えぇっ!? ちっ、違うの!そんなこと、絶対に無いから!」
「別に隠さずとも、俺は言いふらしたりなどしないぞ」
「そっ、そうじゃなくて!本当にありえないのっ、景吾は私のイトコで」
「………い、イトコ?」
「そう!苗字が違うのは母方同士のイトコだからで」
「む……そ、そうかっ。は、早とちりをしてしまったようだな、すまん」
「ううん……あー、び、ビックリした……はは」


ちらりと真田くんを見れば、ちょっと下を向いて髪の毛をガシガシとかいていて。
髪の隙間から覗く耳は少しだけ赤くなっていた。
それは勘違いしたことに対する恥ずかしさからなのか、それとも


「お、俺たちもそろそろ行くか」
「う、うん」


安心したといったような。さっきよりも幾分柔らかさを持った表情で私を促す真田くんを見て。
ちょっとだけ。耳が赤くなったの……違う理由だったらいいなって。

希望持っても、いい?










後でご飯食べてるとき、確実に跡部さまはイトコと真田っちを弄り倒すに100ペソ



作成2010.05.27きりん