(以前置いていた拍手お礼の再アップです 名前変換無し 短い)





「あ、忍足だ。何読んでるの?」
「んんー、…んっ!?あぁ、その……本、や……」
「やだなぁ、そんなの見れば分かるよ。忍足おもしろい」
「え、あ、あぁ。せやな、見たら分かるな。はは……」


放課後。
一緒に帰る約束してた岳人待っている間(職員室に呼び出されてかれこれ30分帰ってこんのや)
ヒマやったし、教室で読みかけやった恋愛小説を読むことに。

読んどる部分が丁度、中盤の盛り上がる見せ場で。
それに熱中しとったもんやから、自分に近づいてきてた人影なんか全然気ぃついてなくて。
それで突然声掛けられて、気ぃ抜けたまま顔上げたら声の主が“彼女”で。
ホンマにビビッて思わずドモッてしもた。


「ね。ちょっと本貸して?」
「何するん?」
「いいからいいから」


そう言いながら目の前の彼女は、自分の左手中指に嵌めてたシルバー・リングを外す。
指輪が嵌っていた指も、指輪を抜く右手の親指と人差し指も、その他の指も全部。
俺のより幾分ほっそい指してて。
指先のネイルも手入れが行き届いていて、なんか可愛らしい、女の子の手って感じやんなぁ。
なんて。……そんなん思っただけで騒ぎ出す俺の心臓、ちょい落ち着きや。

彼女は外したシルバー・リングを、本の中心、ページが変わっとる境目部分にそっと置く。
それを見つめながら、本を前後に傾けたり覗き込んだりしていて。
何見てるんか知りとうて、本を覗き込もうとしたとき、彼女が声を掛ける。


「ほら、見える?」
「なん?」
「影」
「ん、おお……」


俺が見えるよう傾けられた本の中心部には、影で出来たハートのかたち。


「コレ、私の気持ち」
「っ!?」
「そんなビックリした顔しなくても。冗談だよ」
「………さよか」










以前の拍手お礼でした



作成2010.04.15きりん / 再録2011.02.23きりん