(※び、微エロと言い張りますっ 一緒にお風呂 若干短め)





入り口に背を向け体操座りでジッと身を縮めていると、カチャリと扉の開く音が浴室内に響き渡った。
その音を耳にしたせいでビクリと肩を震わせた私を見たからだろう、彼は聞こえるようにクスリとひとつ笑う。
それから無遠慮にザブザブと、波と音を立てながらこちらへ近づいてきて。いよいよ私の背後に立った気配。

ドプン。一拍置いて、もうひとつ立った波が揺れる。
膝立ちになったらしい彼の引き締まった腹筋が背中に触れたのを感じ、反射的に思わず前のめりになってしまう。
しかしそうはさせまいと、彼はお湯から出ていた私の両肩のうち、左側を手でしっかりと掴み私をその場に固定する。
彼の指先からいくつか水滴が流れ、冷えて乾いていた肩を温め潤していく。

右側の方は手のひらでは付かず。何をするのかと思えば、腕の付け根付近から鎖骨までを指で、つつ…となぞっていった。
ゆっくりと進むその動きにゾクリと何かを感じ、思わず身体が震え目を瞑ってしまった私に気をよくしたらしい。
その指は続けて首筋というかうなじを通り、熱を帯びた頬まで辿り着き、つん、と突く。


「ほっぺた、赤いなぁ」
「だってお風呂入ってるもん……、血行?血色?わかんないけど……良くなるもん」
「ふうん……、そんだけなん?」
「そ、そんだけなんっ」
「ん……可愛えやっちゃ」


ジャバンッと、一際大きな水音が立つ。
それが力加減を表しているかのように。ぎゅう、という音が聞こえそうなほど強くきつく後ろから抱きしめられる。

とうとう捕まってしまった。
そりゃあ十分すぎるスペースがあるとはいえ、一緒に浸かっている浴槽内の隅へ身を寄せたところで無意味だったけれど。
何よりこの人相手に逃げ切れるだなんて思っては無かったけれど。それでも無駄な抵抗をしてしまう自分がいて。


「っや、」
「逃がさへん」


身を捩ってみても、力で敵うはずが無い。それどころか力を加えられますます締め付けられてしまう、苦しいほどに。
私の背中と彼の胸との間には水も空気も物質は何一つ無いらしい。吸盤みたい、吸い付くようにピッタリとくっついた。
これ以上もがいても、離れるどころかこのまま彼に自分自身の全てを取り込まれてしまいそうな気さえして。
言いようの無いザワつく感情に襲われた私はハッとして思わず動きを止めてしまう。


「せや、それでえぇ。俺に任しときや……」


気持ちの良い温度に包まれ、立ち上る湯気で視界が真っ白の中。
左耳に届いた独特の、そのウィスパーだけに自分の持つ全ての感覚が集中したのが解る。
いわば研ぎ澄まされたそこへ


―――ぴちゃ


「ふ、ぅんっ」


水音と湿った感覚に同時に襲いかかられ、突然で予測が追いつかなかった私は思わず鼻から息を漏らしてしまう。
そんな私へは構うことなく、彼は続けて耳の輪郭を何度か舌でなぞり、更には内側までそれを侵入させていく。
舌を動かしたときの水音を大きく響かせるように、わざと唾液をたっぷり含ませてそうしてくるせいで、もう左耳はべちゃべちゃ。
熱くて、感覚が無くなってしまいそうなそこへ。故意なのか時折彼が息を吐いたときに通り抜ける風。
敏感な反応を無理矢理戻される傍から再び動かされる舌に翻弄されてしまう。

まだまだ耳元で響く大きな水音に、お腹のもっと奥の方がツンとしてきて。
そのせいで足の付け根がむずむずする、思わず太股に力を入れれば目ざとい彼がすかさず私の耳を唇で食み一層掻き立ててきた。


「っ、あ!」


身体は仰け反り、勢い余って重なり合った太股からはぬるりとした感触。
自分が濡れていることに気が付いて思わず黙り込んで赤面すれば彼が耳元で「まだ耳だけなんやけどな」と
意地悪なひとこととあわせて“そこ”を、鎖骨やうなじにそうしたときと同じように指でつつ…となぞりあげた。


「……続きはベッドでな。可愛がったるわ」


単にのぼせてしまったせいなのか、受け続けた刺激のせいなのか。
融けてしまっていた私の耳へ脳へ、彼のその言葉はもう届いていなかった。










あの曲をダウンロードしてリピートで聴いてたらこんなんできましたけど何かッ^^



作成2010.05.18きりん