(以前置いていた拍手お礼の再アップです 名前変換無し 短い)





「なに食ってんだ」
「あぁ、跡部。良かったら食べる?」
「フン、貰おうじゃねーか」


相変わらず偉そうな跡部へ大袋の中からひとつ取り出して渡してやれば、
個別包装されたパッケージの裏表を、珍しさと興味深さからなのかそれとも疑いの目なのかは解らないけれど、しげしげと眺めたあと、
開けやすくギザギザにカットされた部分に手を掛けて、律儀にも【▲OPEN】と書かれた真上をキッチリと千切り開けた。
(裏表で違う位置に【▲OPEN】と書かれていたことについて「これはどういうことだ」と言及されたので、
そんなこと知らんわ、と思いつつ「どこからでも開く」と伝えれば「じゃあこの【▲OPEN】の意味はなんだ」ときた。しるか!)

攻防の末?、開けたら開けたで「ほう……クッキーか」と。
汚れるのを嫌ってか指先のもっと先で摘んでまた裏表を舐めるように眺め始める。
さっさと舐めるというか、食べればいいのに。ていうか、私が食べてる姿を見てたはずなのにクッキーの認識が今更とかどういうこと。

跡部はやっと意を決したらしくとりあえず半分だけ齧り、味わっているのかもぐもぐと租借する。食べながら、
「ほう、手作りの感覚を再現してやがる、これは……アーリーアメリカン調の素朴な味わいだな。中々やるじゃねーの」だの、
「中には……なんだと、本物のチョコチップじゃねーか。しかも生の状態で閉じ込めてあるだと?」だの、
「どんな製法を……フン、なるほど。二重構造か。俺様のインサイトは誤魔化せねぇぜ!」だの。(※すいませんウィ●ペディア参考)
そんな感じで色々とありがたーい評価を下さった。

天下の跡部家ぼっちゃまの評価だし人によっては本当に価値があるのかもしれないけど。正直どうでもイイ。
ていうか、そんなにアレコレ考えながら食べるものでも無いと思うんだけど?もっと気軽に楽しむもんでしょ、コレ。

跡部は残り半分もあっという間に平らげてしまい、どうやら今口の中には何も無い状態らしい。
もぐもぐしていた口は動かなくなり、ついには唇についたクッキークズすら取ることをしないまま微動だにしなくなった。
そして何かを見ている、それはもうジッと見つめている。視線をたどってみれば、その先は私の手元の大袋。


「……もっと、食べる?」
「! ……フン、お前がそこまで言うなら食ってやろうじゃねーの」
「はいはい、どーぞ」


大袋の開封口を跡部へ向ければ、一瞬目を見開いて一拍のち。
冷静さを装いながら片眉を上げ“フフン”とまた偉そうに大袋を見下ろしながら、向けられたそれに手を突っ込んだ。
それはもうすごい勢いで。どれだけ必死なの。

ガサガサと音をさせて、跡部が一気に掴んだのはなんと5個。手大きいねー……って、ちょっと取りすぎじゃない?
跡部はそれらは一旦机に置いて。それからひとつ掴んで、両手で持って。
さっきのは何だったんだってくらい今度は【▲OPEN】なんて全く気にすることをしないで、
包装が可哀想なほど思い切りバリバリと真っ二つにしやがった。
そしてまた、さっきのは何だったんだってくらい指先につくであろう汚れなんて気にせず、指3本を使い思い切り掴み口へ放り込んだ。
それを何度も繰り返し、ついに跡部は5個とも全て食べ終えたのだ。


「おい、もっとねーのか」


まだ足りねぇのかよ!と思いながら無言で大袋の口を下に向け振ってみせると、
あからさまに跡部は不機嫌そうな顔を浮かべ、まるで私が悪いかのように舌打ちをして去っていった。
テメェ!こっちはなけなしの小遣いで買ったってのに!





数日後、サロンへお茶をしに行くと読書をしている跡部に遭遇した。


「よう、お前のお陰で世界が広がったぜ。これは礼だ、受け取れ」


何やら大それたことを言いつつパチンと指を鳴らし、お供の樺地くんに取り出させたのは、例のクッキー大袋をなんと“袋で”5つ。
それを私に押し付け見届けると、また紅茶を片手に読書を続けた。(もちろん、お茶うけはあのクッキー。皿に山盛り乗っている。)
ちょっと疲弊しつつ。まぁ、クッキーいっぱい貰えてラッキー、と楽観的な私はこのとき、思いもしなかった。
後日、増えに増えた肉と戦う羽目になることを。

ま……それはとにかく、報告しよう。



> かんとりーまあむ は あとべ を とりこ に した!










ちゃらららっちゃっちゃ〜♪ てなわけで、以前の拍手お礼でした



作成2010.04.29きりん / 再録2011.02.23きりん