(連絡)




これまで通りのリズムなら。この時間なら柳生は既に風呂に入り終えて自室におるはず。
そう、確信はあった。一拍置いて、携帯を開く。
見慣れた登録への久しぶりのコールは、認めとう無いが少しだけ緊張した。
数秒の呼び出し音ののち。『こんばんは、仁王くん』久しぶりの柳生の声が耳に届く。
久しぶりやのに、柳生の第一声は以前どおりやった。


「久しぶりに参謀に会ったナリ」
『参謀……あぁ、柳くんですか?懐かしいですね、私もお会いしたいです』
「変わっとらんかったぜよ、ああ、髪が伸びたくらいじゃな」


こんな風に柳生に電話するんもいつぶりじゃろうか。
立海に通っとった頃はダブルスの真面目な打ち合わせから日々の下らん話まで
暇さえあれば電話だのメールだの携帯を触ってばかりじゃった。
卒業して、お互い立海を出てって会わんようになったら連絡回数は増えるどころか減っていく一方で。
柳生が勉強で忙しいんもある、俺がバイト三昧なせいもある。最後に電話したんはもういつやったか。


『こうしてお電話したのは、何時ぶりでしょうか』
「……そうじゃな。もう、忘れた」
『仁王くんや、立海の皆さんがどうしているのか、気にはなっていましたが。新しい生活のリズムが出来てしまうと、どうしても』
「リズムか。じゃが、風呂は入ったんじゃろ?」
『え?……あぁ。……えぇ、入浴は終えていますよ。それは、あの頃と変わりありません』
「ククッ、そうかの。……なぁ、やあぎゅ」
『はい、なんでしょう』
「久しぶりに会わんか」
『はい、私も仁王くんにお会いしたいです』
「フッ。あぁ、そうじゃな。話のついでじゃ、参謀も呼ぶぜよ」
『ああ、それは良い考えですね。是非』
「ん。話振ったのは俺じゃきに。仕様無いから俺が参謀に連絡しちゃる」
『ふふ、御手間でしょうがお願いしますね』
「任せとけ。んじゃあ……また連絡する」
『お待ちしています、では――』


『おやすみなさい』
「おやすみ」


切る直前の。重なる声も、あの頃のまんまじゃ。










その日のうちにやあぎゅに連絡してみる



作成2012.01.15きりん