(遭遇)




そう、あれは中等部を卒業してからそろそろ1年になろうかという冬のことだった。

立海の高等部へと進んだ俺はテニス部に籍は置いているものの、プレイヤーではなく、チームを強くするため裏方に徹していた。
精市や弦一郎には驚かれ(……いや、精市は感じ取っていたようだが)、他部員たちには惜しまれたが。
思い切ったのは、俺にはそちらの方が合っていると以前から理解していたから、
そして、自分でプレイをするということに、少々限界を感じていたからから。

今の俺は中等部時代に呼ばれていた通称そのもの、文字通り―――


「もしかせんでも、参謀かの」
「……雅治か、久しいな」


脱色を繰り返しているわりに美しく、妖しく艶やかに輝く銀色の髪。
学校から帰宅途中の俺の目の前に立ち、銀の尾を揺らし首を傾げたのは中等部時代の戦友のひとり、仁王雅治。
相変わらず、人を喰ったような笑みを浮かべる詐欺師のような男だ。


「その立海の制服、懐かしいナリ」


俺へ向かってしゃくった顎の、黒子がよく見える。そういえば顎の黒子は住居の移転が多いという話もある。
それが正しいかどうかの確定はできないが、少なくとも雅治は中学まで家の事情で引っ越しを繰り返したようだし、
俺と同じく高等部へそのまま持ち上がるかと思いきや「立海はもうえぇ」と言い残し、公立高校へ進んだ。
ひとつのところに留まることが性質上出来ない、浮き草のように漂流し続けるタイプだ。


「そうか。お前は現在、指定の制服は無いんだったな」
「あぁ、私服じゃ。まぁ、どのみち高校にはほとんど行っておらんがの」
「お前らしいな。あぁ、そうだな。久しぶりに会ったのだし、立ち話もなんだ。近況も聴きたい、どこかへ入らないか」
「……そうやの、そうしよか」










行き先はスタバか駅前のドトールな感じ。交流のはじまり



作成2012.01.08きりん